公開初日に見に行けたのでまとまりきらない感想をつらつらと書いていきます。思いついたこと並べていくので必然的にネタバレ要素があるのでご注意ください。
クレジット順で言えば二番目なんだけど緑川ルリ子が実質的に主役になっていた。子どもの頃に見たテレビ版のおぼろげな記憶の中では彼女って父親を救えなかった本郷猛を責めることでドラマを予感させる割には大した役割を持てず、いつの間にか消えていたはずなんだけど今回は浜辺美波の好演もあってヒロインとして魅力的に書かれていたと思う。
愛嬌があって良かった。特に食事を単なる栄養補給と割り切っている*1と自称していてもショッカーの強襲を受けて慌ててご飯を掻き込むときに人間くささが覗いてしまうシーンなんか良かったのではないでしょうか。
ストーリーの上でもオーグとの因縁は元ショッカー構成員であるルリ子に集約されている。その中でも特に印象的だったのはやっぱりハチオーグ（ひろみ）だった。ルリ子とひろみは友人同士にもかかわらずショッカーの幹部と裏切り者として敵対してしまう。
この抜け忍ものでは定番とも言えるシチュエーション*2を抜け忍ものの変奏とも言われる仮面ライダーのリブート作品でヒロインに演じさせることに強い意志を感じた。
さそり男改めサソリオーグが本郷の親友という属性を失ったのも作品全体のやりたいことを整理したとき必然的だったのだろう。
ルリ子との関係を差し引いても「全体が個に奉仕する」ハチの特性を任侠の世界で表現して見せたり、和装で肩をはだけることで美しさや自然にハチ女のシンボルである同心円状の胸を見せることに繋がっているハチオーグは一番好きな怪人だったかもしれない。
カマキリとカメレオンを掛け合わせたKKオーグがゲルショッカー怪人を意識している上、死神グループ製と明かすことで死神博士の存在も匂わせるという中々情報量のあるキャラクターで、クモオーグを慕う三下っぽいセリフも印象的だった。
元ネタを知っている人も知らない人も平等に困惑させてくれるロボット刑事Kは一体どういう意図で配置されたキャラクターだったんだろう。観測者としても立花と滝とバッティングすることで曖昧な立ち位置になってしまっているように見える。二つの視線に晒されていることに意味があるのだろうか。単にイチローがイナズマン(でダブルタイフーン)なんだからロボット刑事も入れちゃえ！って考えかもしれないしとにかく分からない。
公開前の予想でも「倒された怪人は爆発するのではなく泡になって消えていくのではないか」とはよく言われていたけどルリ子も猛も泡になって消えていくのは予想できないって！ 本郷猛（藤岡弘、）が足を折ったタイミングで一文字隼人を仮面ライダー2号にするというネタも分かるけど思いつかないよ普通！
クモオーグと仮面ライダーが向かい合って併走する場面も大分笑いそうになってしまった。ここら辺のオマージュ要素は私ではとても拾いきれないので誰かがまとめてくれるのを待ちたい。
改造人間と仮面ライダーを分かつものを脳改造手術を受けたかどうかに設定していないのも好きなポイントだ。今作の怪人は洗脳によって箍が外れてしまった部分はあるにせよ基本的に己の欲望に基づいて破壊行為を行っている。だからこそ傷つきながらも制御できない己の力を他者のために振るえる仮面ライダーの格好良さが際立っているように思う。
そういえば「社会の中では救われなかった弱者の叫びが牙を剥く」という構図は忍者と極道にも通ずる部分があるかも。そして仮面ライダーは抜け「忍」で……ダメだ、まとまらない。掘り下げてみれば面白いかもしれないがひとまず保留としよう。
えっと、それで二人目の仮面ライダーである一文字隼人も内側には悲しみを抱えているはずなのに群れることを「好きになってみることにし」て、自分が望む自分を演じることで誰かのために戦ってみせるのはこの作品の正義と悪の対比として凄く上手だったね。
仮面ライダーTHE FIRST・NEXTでも一文字隼人はナイスガイとして書かれているので却ってアプローチの違いが際立って見えてくる部分はありそう。
この作品では様々な形の継承が描かれているので、もしかしたら一文字も戦いの中で死んでしまうかもしれないけど彼の志を継ぐ誰かがきっといるんだろうなと思う。これは妄想も良いところだけど滝が仮面ライダー3号になるんじゃないかな。
ダブルライダーの数少ない共闘が暗くて見づらかったり、敵の改心に乗り切れなかったりと欠点も色々あって個人的に凄く好きとかではないんだけど仮面ライダーが好きなら一見の価値がある映画かと。
配信でも映画でも良いから3～4年おきにこういうリブート作品をやってほしい。それこそ平成ライダーも20年以上続いているんだから世代が一周してクウガがノスタルジーの対象になっていても全然おかしくはないので。
