はぐれ者の単騎特攻

ニチアサや読書について書くはずです

読書

2023年下半期の本

今年も終わるのでまた10冊選んでやっていきます。 下半期のトピックはなんといっても「鵼の碑」でしょう。サプライズにもほどがある。17年ぶりの最新長編は出版がすでにひとつの事件といってもいい。 しかし目下注目しているのは「仮面ライダーBLACK SUN」な…

「僕が国語の教科書を編纂するとしたら」アンソロジー

国語の教科書が配られると真っ先にページをめくってどんな作品が収録されているのか確認していた皆さんこんにちは!鷹クラーケンです。 いきなりですが、今の高校生は大学入試の制度変更の煽りによって現代文の授業で物語に触れることがとても少なくなったそ…

2023年 上半期の本10冊

ついこの間始まった2023年も早くも半分が過ぎ去ろうとしています(過ぎ去りました)。皆さんは有意義な半年を過ごせましたか?私は……私は…… ・終末少女 古野まほろ ・野川 古井由吉 ・俺が公園でペリカンにした話 平山夢明 ・書楼弔堂 待宵 京極夏彦 ・アラ…

麻耶雄嵩「化石少女と七つの冒険」 感想:二重三重に仕組まれた後味の悪さ

傑作でした。例によってネタバレしながらの感想になるので未読の方はご注意ください。以下改行を開けてネタバレがあります。

千年王国から遠く離れて―「終末少女」「征服少女」「侵略少女」

古野まほろは著作である推理小説シリーズ「天国三部作」の最終刊である「侵略少女」の刊行に寄せて「本作品は極めてオーソドックスなロジック本格だ。だが主観的に述べれば、これはガラパゴス化の枢奥と最果てに到達した、総伏線主義に立脚するフーダニット本格…

2022年の下半期10冊

半年に一度の当ブログの恒例記事でございます。毎度書き始めるたび「さてこの半年どんな本を読んだかな」と思い返すのですが案外出てこないもので「読書記録を書いておけば良かったな」と後悔を始めてしまいます。日頃記録を怠っている自分を擁護する訳では…

飛鳥部勝則 冬のスフィンクスから黒と愛

以前飛鳥部勝則の初期作品を読んでこのような記事を書いた。 tyudo-n.hatenablog.com それから1年近くたちついにすべての長編を読み終えたので冬のスフィンクス以後の作品を中心に作品の感想や氏の作品の作風について語ってみる次第だ。 さて、上掲の記事で…

多重解決の精華 ワトソン力 大山誠一郎

ミステリの醍醐味を意外な推理=解釈がもたらす興奮に求めるならば、一つの事件に対し複数の解決が提示される多重解決ものは「一粒で何度もおいしい」というこの上なく魅力的なジャンルとなる。 あくまで印象だが実際に愛好家からの人気もあるように思うし多…

2022年上半期の本ベスト10

私の名は赤 アーサーマンデヴィルの不合理な冒険 木製の王子 ヒカリ文集 おれの眼を撃った男は死んだ 第七官界彷徨 Zの悲劇 歪んだ創世記 蒼海館の殺人 崖っぷち 私の名は赤 西洋文化が流入するムラト三世治下のオスマントルコ帝国、細密画(イスラム教圏で描…

オススメ本 アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%90%88%E7%90%86%E3%81%AA%E5%86%92%E9%99%BA-%E5%AE%AE%E7%94%B0%E7%8F%A0%E5%B7%B1/dp/4908465169 …

2021年下半期の本10冊

遅刻もいいところですが駆け足で紹介します 掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリンという人は波瀾万丈の人生を送った人で子供時代は父の仕事の都合で様々な国を転々とし、長じてからはアルコール依存に悩まされながらも様々な職について、三度の結婚でも…

飛鳥部勝則 殉教カテリナ車輪~砂漠の薔薇

飛鳥部勝則というミステリ作家は熱心なファンを持ちつつもある事情から作品が全て絶版になっていて*1幻の作家のようになっている。そのため私は氏の作品を読めないものと思っていたが行動圏内の図書館で読めることがわかったので少しずつ読み進めている。 今…

世界が厚みを持つ瞬間 わたしがいなかった街で

世界五分前仮説というものがある。この世界は今から五分前に今あるような形で生み出された物かもしれない(それを否定しきることはできない)という思考実験のような話だ。 否定しきれないのは、どんな証拠を提示しようと我々の記憶や記録も初めからそういう物…

哲学者の密室 笠井潔

tyudo-n.hatenablog.com 上掲の記事でも書いたが、哲学者の密室は私にとって10年近く読むことができなかった本だ。読むことから逃げていたと言ってもいい。文庫にして1000頁近い分量……だけならたじろぐには当たらない。当時読んでいた京極夏彦の百鬼夜行シリ…

感想:薔薇の女 笠井潔

最近なかなか趣味のための時間をとれておらず、ニチアサもセイバーだけはどうにか見ていてトロプリもゼンカイも溜め込んでるしどこかで巻き返さないとダメになってしまうぞという危機感がある。付け加えるならシンカリオンZも大分たまってるけど そんな中で…

小説 仮面ライダージオウ 感想 ウォズによる壮大タイムトラベル自分探し

近くの書店には置かれていなくて歯ぎしりしていたが、ようやく読めた。息を潜めてネタバレを回避した甲斐あって大変面白く読めました。 予期していたネタバレとしては「燦然! シャンゼリオン」とか「ロボコン強襲!」とかの平成ライダー史の外側からの刺客…

2021年上半期の本(小説) ベスト10

昨年の上半期下半期のベスト10はシリーズ作品を一つにまとめてカウントする都合もあって12~13作程度の中から選定していた。この作業は明らかに落とすべき物以外を拾っていけば自然に達成できる物で面白みがなかったが今回は20作ほどの候補から選ぶことにな…

開拓され続けるパラダイス 詰将棋の世界 齋藤夏雄

今日紹介したい本は「詰将棋の世界」だ。この本は一部の好事家にしか知られていなかった詰将棋の世界を広く世間に伝えることができる良書である。私もこれまでに詰将棋の問題集を何冊か買って勉強していたが、指し将棋の鍛錬のためじゃない詰将棋の多様さに…

祝!了巷説百物語 シリーズの魅力を振り返り「怪と幽」発売に備えよう

京極夏彦の百鬼夜行シリーズと双璧を成す人気シリーズの巷説百物語シリーズの最新作である「遠巷説百物語」が連載終了したかと思えばとんでもない二の矢がつがえられてました。怪と幽にて連載開始! 新作「了巷説百物語」!! 世間を騒がせる様々な事件を「…

2020下半期 小説ベスト10

今更2020年の話かよと自分で突っ込みたくないわけでもないけど、やりたいことをやりたいときにやるのがここの流儀、ということに今なりました。 じゃあ早速結果発表です。 ガープの世界 グッドラック戦闘妖精雪風 肺都 黒より濃い紫の国 黄金の王 白銀の王 …

「ジオウ」後だから書けた快作、「小説 仮面ライダー電王 デネブ勧進帳」ネタバレ有

テレマガ公式による、ゼロノスを主役にした小説「小説 仮面ライダー電王 デネブ勧進帳」が発売されるという発表は大きな反響を呼んだ。 これなーんだ?ヒント: しいたけ#仮面ライダー電王 pic.twitter.com/gJWDRDqPYz — テレビマガジン (@tele_maga) 2020年9…

映画「屍人荘の殺人」宣伝班に騙されましたーネタバレありー

「しじんそーのアレがさー」「屍人荘といえばやっぱアレなんだよな…」 屍人荘の殺人を語るときに歯切れ悪く言及されるアレ、読んだ人がほとんどだろうけど未読の人もいるかもしれないしボカシておきたいアレ、流石にそろそろ時効だろうから言うけど屍人荘と…

2020年上半期の本 Best10+1

半期ごとに面白かった本を10冊選出するように心がけている。普段なら書名を並べてツイートして終わりなのだが今回は折角ブログを始めたことだしそれぞれの作品について軽く感想を書いてみたい。 作品の順列は基本的に五十音に従う。 異セカイ系 インディビジ…

図書館の魔女、アニメ化してくれ

図書館の魔女がアニメ化されたらいいのにな。 図書館の魔女という傑作ファンタジー小説がある。本当なら会う人会う人に勧めて回りたいのだが、この小説欠陥があって、人に勧めるにはいかんせん長すぎる。私は作品の長さを作品に浸れる時間に結びつけて考える…

犬身の解説(蓮實重彦)が凄かったんだって

tyudo-n.hatenablog.com 以前書いたこちらの記事で「犬身」の感想も書くと宣言したが、少しズラして文庫版に付された解説の感想を書いてみる。 蓮實重彦という評論家が著名な大家であることは知っていた。しかし、彼の評論を読もうとは思ってこなかった。強…

メメタァミステリ ジョージジョースター 舞城王太郎

コラボレーションによって生まれる創作物には複数の才能が交差して生まれる輝きがある。しかしながら大多数の消費者はそれを望んでいない。 A×Bを謳っても現実にはA'やA+1/nBが望まれているのだ。 たとえば漫画やアニメが実写化されると原作との差異を見つけ…

匣の中の失楽

先日読んだミステリ小説、匣の中の失楽を紹介する。かなりの長編であることと奇抜な内容から全ての人にお勧めできる小説ではないが普通のミステリに飽きてしまった人には強くお勧めしたい。 「匣の中の失楽」はミステリ、それも衒学ミステリに属する作品だ。…

最愛の子ども 松浦理英子

とても素晴らしい物語を読んだので紹介したい。松浦理英子の「最愛の子ども」だ。当然のように作品の結末に近い部分にも言及するのでネタバレが嫌な未読者はブラウザバックしてほしい。単行本で200ページ程度なので読みやすいだろうし読み終えてから再びこの…