昔、バラエティー番組で「人気を等分しているコンビ、トリオはどこだ?」みたいなクイズをやっていてその選択肢の中に東京03もいたし有力候補みたいな扱いだったんだけど、ふたを開けてみれば豊本がまあまあ不人気で豊本の代わりにテレビの前で泣いたことがある。
日が伸びてきました!鷹クラーケンです!
キングオブコントで優勝する前から東京03を応援していたことが数少ない自慢である鷹クラーケンにとって最近の彼らの活躍は嬉しいやらちょっぴり寂しいやらなのですが、実は不満なこともあって、それは豊本の単体での活躍が今ひとつ目にとまらないことです。
もしかすると世間からしたら今ひとつ印象がないのかもしれない彼ですが、私に言わせれば東京03のコントの立役者は豊本です。コントの脚本を書いている飯塚を差し置いて豊本を立役者と呼ぶのはずいぶん危険な断言のようですが全く根拠がないわけでもありません。彼らのコントが多様なシチュエーションを描けるのは豊本の役柄の幅広さがあってこそだというのがその根拠です。
飯塚なら「(ツッコミ力抜群の)常識人」、角田なら「器が小さくてうざったいけど憎めない小人物」といったようなキャラクターとして印象づけられているかと思います*1。しかし、豊本についてはどうでしょう。「これ!」と言えるようなわかりやすいキャラクターを挙げることは困難ではないでしょうか。
これこそが豊本の凄さの証に他なりません。彼は影が薄いのではなく、設定に応じてどのようなキャラクターにもなり、しかも悪目立ちしないという離れ業をやってのけているのです。
今回はそれをご理解いただくために豊本のキャラクター別に東京03のコントを何本か選出することにしたのでお付き合いください。
前置きが大分長くなってしまいましたが、ここからは実際のコントを見ていただきたいと思います。
なお、東京03はYouTubeで自身のネタをアップロードしているので安心してご覧ください(分類の階層というかジャンルがバラバラなのは勘弁したって……)(定期的にネタを入れ替えているからそのうちリンクが切れるけどそれも勘弁したって……)。
風見鶏
「鬼才」
角田と飯塚の言い合いに豊本が加わることでパワーバランスが巧みに変動していく。
豊本が二人の話を聞いてコロコロと意見を変えるのにそこに不自然さが全く感じられないのはかなりの離れ業。ダイナミックな構図を作れるという三人でコントをすることの強みがここでは極めてストレートに出ている。
そもそも「話を盛る」という日常的な営み(?)それ自体をここまで面白くできるのが素晴らしい。
豊美
「東京の両親」
豊本は女装が映える。本当はもっと若い女性を演じている豊本がほしかったけれど今回はこれで。
今回豊本が演じているのは高円寺の定食屋のおかみさん。柔和な笑顔と物腰がとてもよく似合っていて、年も性別も違う人物が演じているとは信じがたいまで言ったら言い過ぎだけど本当に様になっている。
中盤以降の豊本の大暴れでは珍しく彼が大ボケになっていて豊本が輝いている一本だと言える。
豊美(若い女性としての役名)のときは色恋が絡んだりして豊本が軸になることが多いイメージがあるのでそれだけでちょっと嬉しい。
上司
「同意見」
定番であるサラリーマンネタは三人それぞれが上司を務められるためにワンパターンに陥ることなく新鮮な面白さを産み出しているが、豊本が上司を務める場合には多少欠点があっても有能な人物になっていることが多い気がする。
もっともしっかりと意識して確認しているわけではないので実際のところ他の二人が演じる上司とどの程度異なるかは分からない。
ここでは上司豊本と平社員飯塚に挟まれる中間管理職の角田が非常に面白い。その分豊本の台詞は少なめだが短い時間でしっかりと上司としての存在感を見せている。
奇人
「ドキュメンタリー番組」
豊本自身のキャラの強さで引っ張っていくパターンも味があって良い。
ドキュメンタリー番組なのに撮り直しをお願いするという突飛な行動がすでに面白いのだが「身近な人に自分の醜態を見せたくない」という理由は自分の身に置き換えれば理解できてしまう。
そこからひとつの嘘が暴かれて撮り直しが実行されるんだけど、ここがもう最高。
今までは「コントらしい誇張はあるが普通の人間」だった豊本が一気に得体の知れない人物に変貌する。
ある意味では内面が伺えないのが豊本の魅力なのかもしれない。
ワンポイント
「開店祝い」
ワンポイントのときは豊本の出番が少ない。豊本の出番が少ないときはワンポイント。
今公開されている範囲では豊本の出番が極端に少ない作品が無さそうだったのでひとまずこちらのリンクでお茶を濁させていただく。
今は公開されていないが豊本がファミレスの店員として途中までほとんど無言で通すコントが強く印象に残っている。
出番が少ない場合は出番1つで話の流れを変えるような役割が求められることが多いだろうからそんなときにこそ豊本に注目してみるのが面白いかもしれない。
お笑いについてしたり顔で解説するというダサムーブをかましてしまいましたが後悔はしていません。面白いものはこんな文章があろうがなかろうが面白いのですから……
*1:勿論膨大なネタの中にはそうした類型から外れるネタもそれなりにある