2024年の3月更新で『メギド72』のメインシナリオ11章が完結した。この11章ではいくつかの大きな騒動も収束を迎え、リリースから数えて6年以上もの時間をかけた物語のある意味では大団円とも呼べるような作りになっている。
しかしながら1プレイヤーである私にそういった感慨が思いのほか湧いてこない。それは何も不満からと言うわけではない。むしろ12章以降にどのような展開が待ち受けているのだろうという期待感が大きすぎるのだ。
これだけ長大になると普通であればマンネリや停滞に陥っていてもおかしくないのだけど、ことメギド72に関しては未だに物語の根底を覆しかねない情報がどんどん出てきて本当に目が離せない*1。
失礼を承知で言うとソシャゲのシナリオって「このソシャゲは女の子のかわいさをお楽しみ頂くため、 邪魔にならない程度の差し障りのないシナリオをお楽しみ頂くゲームです。」 だと思っていたんだけどとんでもないね。ソシャゲのシナリオを測る尺度をもたないけどちょっと面白すぎるんじゃないか?
というわけで(ベーシックモード実装でストーリーを読む難易度も大きく下がったことだし)、面白さの割りには今ひとつ浸透しきっていないメギド72のメインストーリーの凄さをネタバレを極力回避しながらお伝えしていきたい。
メインストーリーのあらすじとサブストーリー
二つの異世界、メギドラルとハルマニアによる最終戦争「ハルマゲドン」が人間世界ヴァイガルドで繰り広げられて遙かな歳月が経ち、ハルマゲドンやそれにまつわる知識が伝承上のものと見なされている現在。
主人公は自らの住む村が、メギドラルの使役する「幻獣」によって壊滅させられるも謎の集団に助けられる。そこで彼は自らが伝承上の悪魔メギドを使役する力を持っていること、メギドラルから来たメギドが再びハルマゲドンを起こそうとしていること、そして謎の集団の正体が様々な理由で追放の憂き目にあったメギドであることを知る。
メギドとともに旅に出た主人公は幾つもの苦難とそれを生み出す世界の構造に立ち向かうこととなる。
ものすごくざっくりした粗筋だがこのありふれた異世界ファンタジー風の粗筋から様々な展開を繰り出すことでSFや戦記、任侠ものなどのジャンルを内包するまでになる懐の深さがメインの魅力と言える。
おそらく人によっては別のジャンルを想起する(ミステリなど)だろうし、今後も更なるジャンルを取り込んでメインは進んでいくはずだ。
一方で一ヶ月に1度のペースで配信されているイベントストーリーや、キャラクターごとに実装されているキャラストーリー(こちらは未入手のキャラのものであっても一話のみ試し読みできる親切仕様(生殺しとも言う))もメギド72の世界を語る上で欠かせない。
特にイベントストーリーは緩やかに関連しあうことでメインとは異なる長尺の物語を紡ぐこともあるためメインの補完ともなり、メインにやがて合流する支流ともなっている。現在は「東方編」と呼ばれる一連のストーリーが展開中で、初めて明確にシリーズと銘打たれたイベントであり、メインでは触れられない概念やキャラクターが多数存在することから非常に注目されている。
また、キャラストーリーもメインではどうしても不足しがちなキャラクタの掘り下げが行われていることからメインに関わることこそ少ない(「少ない」と言うことは場合によってはあるということです)が、是非とも読んでほしい。
2024年3月現在プレイアブルとなっているメギドの数は157柱*2と非常に多いため好きなメギドを見つけるのにも有用なはずだ。
群像劇としての芯の強さ
先ほどメインストーリーは様々なジャンルを内包しているといったが、その中でも特に重要になるジャンルが群像劇だ。
そもそもソシャゲにおける商法の内現在主流になっているのが「キャラクター推しによるガチャ商法*3」である以上ソシャゲのプレイアブルキャラクタはすべからく魅力的であるべきであり、そんな彼らが交錯する群像劇を描けば面白くなることは当然だ。
……というのは机上の空論だ。実際にはストーリーが長期化する中で登場するキャラクタは増え続けるのだから、いつ破綻してもおかしくない綱渡り的な芸当というのが正確な評価だろう。
その綱渡り的な芸当を可能にするのが群像劇としての芯の強さだ。たとえば会議シーンの面白さ。
様々な軍団と戦争を繰り広げるなかで情報を持ち寄り当座の方針を定める。新たにもたらされた情報を吟味・解釈し仲間と共有する。このようにメギド72では複数のキャラクタが集まって会議をするシーンが多いのだが、それが凄まじく立体的なのだ。
「あらかじめ用意された結論に向かって1つの推理を分担して喋らせる」というのが平板な会議だとすればその逆で、全てのキャラがそれぞれの見識に基づいて意見を言うことで情報が整理されていく。
さらに意外性と納得感を両立させながらメギドにスポットライトを当てる手腕も素晴らしい。様々なバックボーンを持つキャラクタが思わぬ形で困難を打開するのは群像劇ならではの面白みだが、メギド72の場合その人選を示された際の驚きと納得に強度があり、受け手に対する情報のコントロールが極めて上手い。
群像劇としてのクライマックスである10章に触れないわけにはいかない。ここではある事情によっていくつかの集団に分断され相互の意思疎通を図ることもできない軍団員の戦いが描かれる。
非常事態故に独自の方針で動かざるを得なくなった小集団の動きはそれぞれが納得感のあるもので、しかしながら与えられた情報の少なさからプレイヤーとしてはやきもきもする展開だが、それらが最終的に1つの大きなうねりとなる様には当時非常に大きな感銘を受けた。
ハルマニアと意外な形で交渉を持つとあるメギドなどシリアスな笑いも盛り込まれておりメギド72全体で見ても非常にレベルの高いシナリオだ。
ここ一年くらいのメギド72のメインストーリーの情報量が半端じゃなくてこれを作っている人には何が見えているんだろうとそら恐ろしくなる瞬間がある
— 鷹クラーケン(Ken T@kakur@) (@nomu_utsu_cow) 2023年4月14日
長期的なスパンで展開する物語とテーマの噛み合い方
メギドたちは非常に長命であることから時として1,000年単位の確執や思いが描かれる。勿論単体で見ても「エモい」が、それらが決して不変ではなく常に変更の可能性に開かれていることにこそメギド72の真価がある。
変わり続けていくことはメギド72のテーマの1つでもある。キャラクタの再実装である「リジェネレイト」もイベント等を通した魂の変容*4と定義されるし、激動の中で主人公が果たすべき役割も絶えず変わり続ける。
そもそもメギド72に登場するメギドの多くは追放された際に人間の魂と混ざり合い変質を余儀なくされている。不可逆な変質を遂げたものがかつての自分を知るものとどのように関係性を編み直していくのかも見所だ。
6章で描かれるウェパルとサルガタナスの友情とも憎悪とも言いがたい関係性の他にも「闇討ち専門の武闘家と高潔な騎士」や「厳格な料理人と彼に料理を教えたマイペースな探求者」などなど、多様な関係性がどのような変遷を経て新しい均衡状態にたどり着いたのか、或いは今後どのように変化していくのかを見届けてほしい。
メインも当初の目的であったハルマゲドンの阻止を超えて視野は果てしなく広がり、初めには想像もできなかった地平での戦いを見せている。
長期的なスパンというのは何も作中だけの話ではない。一度決着を見たかに思われた問題に再び光が当てられ、新たな角度から問いを投げかける気の長さはプレイヤーならきっと共感してくれるはずだ。広げた風呂敷を幾重にもたたんで再び広げる。パン生地が何度もこねられることでよりしなやかに伸びるようにメギド72のシナリオは強度を増している。
ということで今後も更なる盛り上がりを見せてくれそうなメギド72から目が離せそうにありません!いかがでしたか?
おまけ
ストーリーとは全くもって関係ないがメギド72のすごいところは劇中で流れる音楽が公式から配信されているところだ。
【まとめページ】メギドの音楽 - 【公式】メギド72ポータルサイト
キャラクタの3Dモデルも配信されているので細かい造型を見ているだけでも十分楽しい。