はぐれ者の単騎特攻

ニチアサや読書について書くはずです

流行りものに「けっ!」となる心性と鬼滅の刃

こんちは、鷹クラーケンです。最近は心身ともに青息吐息で気付けば月三本記事を上げるはずだったブログからも足が遠ざかっていました。これからはゆったりまったりがいいのかと思うのですが、何せ立ち上がったばかりのブログなのであまり放っておくと折角身についた文章執筆の呼吸を忘れてしまうかもしれないので……?

 

呼吸!そう、皆さんは鬼滅の刃という作品をご存じのはず。

最近では道を歩けば僕を連れて進めとしきりに命令する声が聞こえ(そうでなければ香水が思い出させている)、緑と黒の市松模様が溢れかえる令和二年の日本で鬼滅知らずは常識知らずです。水の呼吸を語れなければ職場でのコミュニケーションがままならぬ。全集中を知らなければ家族とのコミュニケーションに支障をきたす。あなたはもう無限列車編をご覧になりまして?

 

鬼滅の刃は「みんなが話題にするから読んでみよう/見てみよう→面白かったから語りたい」、このサイクルが軌道に乗ることで社会現象となった。世間的には鬼への優しさがどうとか大正ロマンがどうとか説明する向きもあるようだけれど爆発的人気を得た作品がなぜ爆発的人気を得るに至ったかを説明する試みは循環論法的な後付けに過ぎず、究極的には偶然が売り上げを決定していることはリンクに貼った本が詳しく説明してくれている。

www.amazon.co.jp

 

しかし流行すればするほどムーブメントの内実を「下らなく空虚で空疎なものに決まっているさ」と決めつけて踊らされる奴らを見下してしまう難儀な人種が存在します。私たちです。

一般大衆がまたつまんないもので騒いでるよ。見てらんないね。

 

たちの悪いことにインターネットは「ゴリ押し」とか「ステマ」とかはやりを否定するための便利な言葉を供給することがやけに得意です。そこでは流行を否定することが一種の正義にさえなりえます。一部の人に見られる広告代理店を過度に敵視する風潮はあれいったい何なんでしょうね。

さて、歴史的出来事(一度きりの出来事)に理由付けを施すことの難しさ、その際に陥りがちな罠について語った本を紹介した後でこんなことをするのもどうかと思うが私の「けっ!」が何に由来するのか、少し譲歩してどんな事柄に結びついていそうなのか分析すると以下のようになります。

 

・他人が右と言えば左を選びたくなるあまのじゃく根性(逆張り精神)

・「にわか」への嫌悪感(ここでのにわかは悪質な新規ファンを指す)

・今更追いかけるのはめんどくさいという怠惰さ(と酸っぱい葡萄)

 

「私の」とは言ってもこの三つのうちのどれかを感じずに流行りを否定する人は少ないのではないでしょうか。

逆張り精神についてはわかりやすく、持ち合わせない人からも「そういう人はいるよね」と理解してもらいやすいでしょう。にわかへの嫌悪感となると理解を示す人は少し減りそうです(最近はキッズと呼ぶのが正しいのか?)。しかし、いい加減な理解で(無自覚に)嘘をまき散らしたり、マナーが悪かったりするにわかファンは人気作品には必ず湧く。自分がそういった類の新参者だと思われるのも嫌だ…。今更追いかけるのはめんどくさいという怠惰さを理解してくれる人、どれくらいいるんだろうな。

また「けっ!」とまではいかなくとも「マイナーもの好き」を自任していれば流行りに背を向ける動機になるでしょうね。

 

「だから私はこれからいくら鬼滅の刃が流行ろうとも漫画を読むこともなければアニメを見ることもありません。」と〆られれば良かったのに読んでしまっていた。今年の初頭にネカフェで13巻まで読んでしまっていた。

その時も単行本がやたら売れていることはニュースで知ってはいたのだけれど自分の周りでブームを実感させるようなことは何もなくブームに乗せられている感を持たずに読めた。そして当時の私は最近のジャンプの漫画の雰囲気を知るための作品の一つとして鬼滅を選択した。

感想としては「面白いけど『好きな漫画トップ10』を選ぶときに候補になることもなさそう。」勿論途中までしか読んでないのだから如何様にも変わる評価ではあるけども。

シリアスなシーンの最中にも顔を出すコミカルな会話は好み。最近のジャンプのもう一つの代表として読まれた呪術廻戦でもこの種のギャグとシリアスの混淆が見られた。

 

ここら辺ギャグ回に一話割くことも難しいような展開の速さがもたらしたものなのかなと思う。仮面ライダーなんかおもちゃを売らないといけない関係もあって展開のスピードが年々早まっていくといってもさほど大きな間違いにはならないだろう。ナイツの塙もM1の短い時間で詰めこまれるボケの数は増加傾向にあるといっていた気がする。

 

この本はM1に興味がある人ならとても面白いはず。

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書) | 塙 宣之 |本 | 通販 | Amazon

言い忘れていたけど別にアフィリエイトで貼っているわけではないので安心してリンクを踏んでほしい。

 

とまあそんな訳で娯楽における情報の高密度化というのは一つの潮流としてありそう。

キャラに愛着を持たせるにはギャグは有効。しかしギャグによるキャラクターの掘り下げをじっくりやる時間はない……となった時にシリアスな場面でも入れやすい会話の軽妙さが選択されたのかもしれない。

(個人的には呪術の方が好みだったけど)実際面白い作品であることは知っている。中途半端に読んでしまったせいで今後の展開も気になっている。でも流行っているうちは手を出さない。読んでしまえば「けっ!!!」ってなるから。

 

もしもジャンプを購読して鬼滅の刃を読んでいたら素直にこのビッグウェーブに乗れていたのかも――

実際には「けっ!」は「好きなものにメジャーになりすぎてほしくない」に転化するだけだ。これも面白い感情だと思う。