はぐれ者の単騎特攻

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ザ☆ウルトラマンはウルトラマン入門にうってつけ

ザ☆ウルトラマンウルトラシリーズの中でも一風変わった作品といえる。科学警備隊に所属するヒカリ超一郎はバッジを額に当て「ウルトラチェンジ」と叫ぶことによってウルトラマンジョーニアスへと変身する――こう書くとテンプレめいた設定だが実はこの作品、特撮ではなく日本サンライズが制作したアニメーションなのである。

アニメであるせいかオイルショックが生んだ珍作品のように扱われてきたザ☆が「どのウルトラマンから見ればいいのかわからない」と悩む人に自信を持って勧められる秀作であることを読者の皆様に伝えたい。

初心者に何を勧めるかの議論は内輪のグルーミングであるとの認識が最近広まってきている。私もそう思う。気になる作品があるならそれを見るのが一番だし、現行の作品があるならそれを追うのも正しいだろう。ただ、「名作(評価が定まった作品)から入りたい」「自由にしていいといわれると困る」と感じる人が一定数いるのも事実。繰り返しになるがそんな人におススメなのがザ☆なのだ。

まず初めに強調しておきたいのが、先述した通りテンプレ的設定であること。

・主人公が防衛隊に所属している。
・遠い星(U40)からやってきた超人の力を借りる。

怪獣がらみの事件を引き受ける防衛隊がウルトラシリーズの重要な要素であることは、ウルトラマンの前番組のウルトラQの主人公が超常現象を追う三人組だったことからも明らかだ。売り上げに結びつかないからか冷遇された時期もあったが最近復活の兆しを見せている。個人的な思い入れも込めて断言するがやはりウルトラマンと言えば防衛隊なのだ。

普段のウルトラマンはなぜ人間の姿をしているのかという疑問には様々な答えが用意されてきた。普通の人(型生命体)が後天的にウルトラマンの力を手に入れる「獲得型」、ウルトラマンが地球で過ごすために普段は人間に変身している「変身型」、そしてザ☆でも採用されているウルトラマンが人間に憑依し力を与える「憑依型」が主なものだ。この中だと憑依型が最もメジャーだ。細かい点のようだが主人公のとるスタンスや発言の説得力にもつながる重要な点だと思う。実際に本作の最終回が残すさわやかな余韻とメッセージは憑依型ならではだ。

アニメであってもザ☆はウルトラマンとして直球であると納得していただけただろうか。いくら面白くても変則的な作品では初心者向けとは言えない。作品を貶める意図はないが、ホラー演出と連続ドラマ性を強く打ち出したネクサスやジュブナイル作品のような雰囲気のギンガなどは初心者には勧めにくい。勿論英雄MADから入った人やニュージェネレーションシリーズに興味を持った人はこれらの作品から見始めてもよい。


さらに、ザ☆は作品としての独立性も非常に高い。過去シリーズから登場する怪獣が(27話を除けば)いなく、M78星雲のウルトラマンが一切出てこない点も作品間のリンクを気にせずにみられるメリットとして大きい。さらに矛盾するようだが2019年放送の「ウルトラマンタイガ」にU40出身のウルトラマンタイタスが登場したことで最新作をより深く楽しむ手引きとしても活用できるようになった。

また、アニメならではの表現を大いに活用している。ジョーニアスよりもはるかに大きな怪獣やガス状の怪獣、複数体同時に現れる同族の怪獣は実写ではなかなか再現できない。

アニメだからこその壮大な表現はストーリーにも幅を与えた。終盤では占拠されたジョーニアスの故郷U40を開放するために科学警備隊は宇宙に飛び出し、スペースオペラが展開される。ちなみにCGが発達した現代でも実写とアニメでは実現可能なロケーションに大きな差がある。例えば鎧武ではアニメ畑の虚淵玄を脚本家にしたが、物語のカギを握る異空間「ヘルヘイムの森」の表現に現場の監督は苦労したという。

最後に一つおすすめポイントを挙げるなら最終回のネタバレをされる危険性の少なさもある。一話完結が基本のウルトラマンシリーズでは最終回のネタバレにそこまで大きな意味がない。とはいえネタバレが全く気にならないことはないだろう。その点「明けの明星」や「ゾフィー」のようなネタをほとんど知られていないザ☆は初心者に勧め易い。いや、まあ、最終回の余韻についてはこの記事で触れちゃったんだけれども……。

一昔前なら視聴手段が限られていた為いくら内容がよくても初心者には勧めづらかったが、今はHuluで配信中なので気軽にみられる。

ウルトラマンを見てこなかったあなたもHuluで再生ボタンを押しさえすれば「これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議なシリーズの中に入って行くのです」by石坂浩二