はぐれ者の単騎特攻

ニチアサや読書について書くはずです

ゼンカイジャースピンオフ ゼンカイレッド大紹介 白倉節ブルンブルン

2021年の新戦隊はスーパー戦隊シリーズ45作品目にしてゴーカイジャーから10作品目となる。多くのファンから寄せられた期待は「レジェンドを使ったお祭りをもう一度」であったはずだ。実際に発表されたゼンカイジャーはその期待から絶妙にずらされた斬新な物だった。主人公であるゼンカイザーはアカレンジャーとビッグワンを足して2で割ったような白い戦士。彼とともに戦う4人の戦士は過去の戦隊ロボをモチーフにしたロボット戦士で戦隊らしい軽快なアクションはとてもできそうにない。

 

確かにレジェンド要素はあるけどそれ以前に主役を張るコイツらはなんなんだよ?!なんかこの感想、既視感があるな。具体的にはディケイドやジオウで。

ということで今作を手がけるのは戦隊のメインプロデューサーは意外にも初めての白倉伸一郎。戦隊ファンは期待と不安をない交ぜにした気分になっただろう。塚田Pによって現代的な価値観と戦隊の面白さを巧みに融合させられたキラメイジャーを楽しんでいた最中なのでなおさらその雰囲気は強かったように思う。

 

しかし蓋を開けてみれば個性豊かなキャラクターの掛け合いや馬鹿馬鹿しい画でつかみは上々。一話完結の形をとりながらもキャラクターの魅力をわかりやすく伝える話作りは以前にジュウオウジャーとルパパト(とヒープリ)を手がけた香村氏の手腕が大きそうだ。

 

初めは奇異に思われた様々の要素にも長年ニチアサおよび東映特撮に向き合ってきたファンはすぐに適応した(色々見てきたので)(ゼンカイは話も楽しいし)。しかしゼンカイレッド大紹介は視聴者の当初のツッコみに真っ正面から向き合う。ぶっちゃけあのタイミングは「今更何言ってるの?」とならずにこの手の自己言及的な話をするにはギリギリだった気もする。

 

以下あらすじおよび感想

介人は以前共闘したアカレンジャーの「お前、赤じゃないのか」という何気ない一言が頭にこびりつき、寝不足になってしまい戦闘にも精彩を欠いてしまう。そこに颯爽と現れたゼンカイレッドがピンチに陥ったゼンカイザーを助けて去って行く。

 

最初のゼンカイジャーを名乗るゼンカイレッドはカラフルにも現れ謎の説得力と神々しさでキカイノイドをスカウトするもあえなく失敗。するとなぜかガオーンを皮切りにマジーヌとブルーンは人間になる。ジュランまでも人間になると4人はゼンカイレッドをセンターに据えて変身しようとする。「ゼンカイジャー」はノーマルな戦隊へと矯正されていく。しかしこれこそが今回の怪人ノーマル悪者ワルドの狙いだった。

 

スーパー戦隊のセンターはレッドがセオリー」byゲゲ

「どうせ負けるならレッドに倒されたい」「巨大戦を夢見てた俺」ノーマル悪者ワルドは戦隊の様式美に思い入れがあり(シャンゼリオンの「ヒーローの先生」を思い出す)。しかし真に重要なのは形式ではない。人間になり変身ができなくなっても誰かを守ろうとする心なのだ。真理に気づいたゼンカイレッドはゼンカイザーとタッグを組みワルドを撃破する。

 

いずれリーダーになると実質的に宣言したゼンカイレッドに再び自信を喪失する介人。 そこに歴代の白いリーダー(差し色の白が割と目立つレベルも含め)が集まり激励する。鶴姫として広瀬仁美を出すのは文字通りサプライズでした。後編の後半のみの登場とはいえ番外編のテーマに直結するので役どころとしては案外おいしかったのではないか。

「赤くないリーダーなんて変じゃん」の声に「いや白いリーダーもいるのだが?」と返すという身も蓋もない解決方法。ニンジャホワイトやシシレッドオリオンの存在を忘れ適当抜かしていたノーマル悪者ワルドは戦隊版ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツだ。ウルトラマンに神秘性がないとは言わんがそれだけがウルトラマンではないのだ。

 

よくよく見るとゼンカイザーの下半身って白と赤の比率がほぼ同じだしマントの裏地も赤いし先入観ほどには白くない。じゃあなんで白い戦士に見えるかと言えばやはりジュランの存在が大きいだろう。

あと、今回の作品でとりあげられた「普通じゃない点」は「白がリーダー」と「メンバーの大半が機械」なんだけど介人が思い悩むのは前者のみで後者についてはガオーンが気をもむけど介人自身は違和感を全く持ってないのが彼の美徳としてよかった。

ただ残念なのがゼンカイレッドの活躍の少なさ。ゼンカイレッド「大紹介」というタイトルがカイの音で韻を踏むためだけのものじゃないと思いたいが……(伊勢さんなら呼べば来てくれそうだし)。