はぐれ者の単騎特攻

ニチアサや読書について書くはずです

(笑)が煽りになる人ならない人

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アハハハハハ
(笑)ってとても便利ですよね(笑)

文字だけだと堅苦しくなってしまうメールやLINEで重宝している方も多いのではないでしょうか(笑)

私もついつい使ってしまってこないだ母さんに「アンタ(笑)を使い過ぎやろ(笑)」とツッコまれちゃいました(笑)

うーん……今回の記事はこんな感じでいこうと思っていたのですが書いていて予想以上にストレスが溜まるので止めます。

率直に言いますと私、この「(笑)」というやつが大の苦手なんですね。記事のタイトルに則して言えば「(笑)が煽りになる人」なんです。

私のような方、他にも沢山いるのではないでしょうか。煽り目的で使われもする言葉ですから当然でしょう。勿論そうでない方も沢山いるからこそ「(笑)」は廃れずに生き残っているのですが。

なぜ同じ文字を目にして煽られたように感じる人と感じない人が出てくるのかについてグルグルダラダラ回り道、寄り道をしながら考えていきましょう。なおこの記事では「(笑)」はストレスを生み出さないようにカギカッコの中に閉じ込めます。くどいと感じる方もいるでしょうがご了承下さい。

(笑)の受け取り方一景

私の一挙手一投足を絶えず見つめているある方を例に「(笑)」の受け取られ方の例を見てみましょう。その方はメールに「おはようございます(笑)」と書かれていたらどのような声音を連想するのでしょうか。

「俺はこんなのに挨拶したくない。かといって周囲の人間に俺が人によって態度を変える人間だと思われると困る。ここはひとつこいつの背後に置いてある観葉植物に声をかけるつもりで挨拶を済ませてしまおう」
大雑把に言ってこう言いたげな声音を想像しているんだそうです。生き辛そうですねー。

私、ではなくこの方は「(笑)」を嘲笑として受け取っているわけです。その方も普通なら親密さを示す微笑みを想像すべきだと分かっているのです。にもかかわらず嘲笑を見出してしまう。

ここが大きなポイントになる部分でして「笑いには様々なニュアンスが含まれ得る」 言い換えると「笑いは文脈に依存する部分が非常に大きい」のです。

(笑)はどこから来たのか

wikipediaによれば「(笑)」の歴史は意外と古く、第二次世界大戦以前から裁判での速記録などで使われていたといいます。私が裁判例情報を検索したところ例は確認できなかったのですが、帝国議会会議録検索システムで検索すると昭和20年に(笑聲)の形で使用例が確認できたのでいずれにしても70年以上前からあると見ていいと思います。

確認できる最初の「煽りの(笑)」?

「(笑)」は一体いつから煽るために使われるようになったのでしょう。おそらく定説はないのですが幽遊白書の2巻で使われているのが確認できる最初の「煽りの(笑)」とも言われています。富樫義之先生といえばレベルEで「想像の斜め上」という表現を日本で初めて使ったともいわれているほど新しい表現に敏感な方ですしいかにもありそうな話です。

遅くとも80年代後半には煽りとして使われていたということで意外と早い段階で「(笑)」には多義性が生まれていたといえますね。

しかし、煽りとして使われていなかった「(笑)」に煽る用法を定着させ、いまとなっては従来の用法の意味を歪ませてしまったインパクトはどこからやってくるのでしょう。

(笑)の派生形

インターネット時代になりテキストによるコミュニケーションが増えるにつれて「(笑)」の出番も益々増えることとなります。そして、簡潔な表現を好むネット住民の心理によってか、はたまた内輪で通じる言葉を求める欲求からか次第に形を変えていきました。

例えば「藁」と書いて「わら」と読ませたり、半角カタカナでワラと書いてみたり、変換の手間を惜しんでwaraとしてみたり……こんな具合に「(笑)」の派生形は非常に多いのですが、今日最も見かける機会が多いのは「w」かと思われます。この表記の秀逸なところはwキーを長押しすることで笑いの度合いを視覚的に分かりやすく表現できる点でしょうかwwwwwwwwwww

さらに付け足すとタイピング中にwの隣にあるeキーを押すことで引き笑いしているように見えるのも高評価wwwっうぇwwwwっうぇwwwwwwっうぇ

……少し話は変わるのですが最近では「草」(wの形が芝のように見えることから生まれた表現)や「大草原」という言葉が使われる場面も多いです。しかし、この言葉は文末につけにくいことから「(笑)」や「w」とは少々異なるカテゴリにあると私は認識しております。顔文字の「^^;」は純粋な笑いも煽りも表せる点も含め「(笑)」に近いと思います。

笑いとは何か

古来から笑いは哲学の対象となっていて今でも研究が続けられているそうで。この記事を書くにあたってざっと調べてみましたが笑いを生む要因は3つに大別できるそうですね。
・優越理論
 笑いは他人の失敗から生まれる優越感が作りだすとする理論

・不一致理論
 笑いは予期していなかった出来事が発生した時に起こるとする理論

・開放理論
 笑いは高まった緊張がなくなった時に生まれるとする理論

落語家の二代目桂枝雀が唱えた「緊張の緩和理論」も有名です。
赤ん坊がいないいないばあでキャッキャと笑う理由は緊張の緩和理論で説明できますね。つまり、「顔が見えない緊張(不安)」が「顔が見える安心感」へと瞬時に変わることで笑いが発生すると考えられるのです。

動物の行動との比較から笑いを科学的に解明しようとする研究もあります。学者のファンホーフは劣位に置かれた猿が見せる恐怖・服従を示す行動であるグリマスがスマイル(ほほえみ)の由来だと唱えました。

笑いには非常に多様な側面がありますが、優越理論や微笑みの起源に目を向けてみると、笑いはそもそも攻撃的なニュアンスを含みやすいのかもしれません。

(笑)の立ち位置

日本語は文章の重要な要素を後ろに持ってくる傾向があるといわれます。例を示すと「Aさんって悪い人じゃないけど言い方きついよね」と「Aさんって言い方きついけど悪い人じゃないよね」という二つの文では明らかに意味が異なりますね。前者のほうがAさんへの苦手意識を強く感じとることができます。

純化して言えば我々は文章の後ろに置かれた要素を重要視してしまうのです……! そして(笑)は必ず文末につきます……! ここも非常に重要なポイントです。読者の皆様に考えてみてほしいのですが脳内で「おはようございます(笑)」を音読するとはじめから半笑い(もしくは朗らかな笑い方)で再生されるのではないかと思います。

ところがですね、ところが初見の文章を読んでいる途中では笑っているニュアンスをはじめから了解して読むことは極めて難しいんです。長い文章であればあるほど読み終わった際の「本当は笑っていたのかよ」との衝撃は大きいですよね。もはや叙述トリックの衝撃にも匹敵するほどの特大の驚きです。(サンドイッチマンのコント「花嫁の手紙」でも似たシチュエーションがあったような)

一つ実験をしてみましょう。「(笑)」の位置だけが異なる文章を並べるのです。右の文章では文頭に、左の文章では文末に(笑)を置いてみます。もしも私の仮説が正しければ右の文章の煽りの威力は減少するはずです。

   ・元気出せよ(笑)       ・(笑)元気出せよ
   ・お疲れ様です(笑)      ・(笑)お疲れ様です
   ・山月記は常識(笑)      ・(笑)山月記は常識
   ・お前面白い奴だな(笑)    ・(笑)お前面白い奴だな

いかがでしたか?
私としては腹立たしさが半減したように思えるのですが、私の目が自説可愛さに曇っている可能性や違和感に釣られている可能性は十分に考えられるので何とも言えません。DMでもいいのでこっそり感想を教えて下さい。

結論
当座の結論としては「(煽りの意図がない)(笑)が煽りになる人ならない人が存在するのは、元来攻撃的なニュアンスを含む(含みうる)笑いが文末に突如現れることで重み付けがなされ深読みが誘発されるから」ということになります。


次はスタプリ最終回について語れればと思うけどタイミング次第ではヒープリ初回について書くかも。