はぐれ者の単騎特攻

ニチアサや読書について書くはずです

がんばれいわ‼ロボコン/スプリンパン/人体のサバイバル 感想 浦沢脚本に埋もれない力強い三本

今回の三本立て、MOVIE大戦アルティメイタム以来のスクリーンで見る浦沢脚本……以外にも見どころ溢れる強烈なラインナップでした。

「三本立てっていうのは三本とも立てるから三本立てなんだよ」との意思を感じて大変良かった。

がんばれいわ‼ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻

開幕からメタルが流れる中、中華料理を食べる人間の再生と逆再生、過激なズームインとズームアウトの映像を見せられるので「巨匠は今日も元気だな」の感情に脳が支配される。露骨に受けを狙っているように見えるカレーメシのCMは冷ややかに見つめる私だけどこれは楽しめた。登場人物を一所に集められないコロナ禍特有の事情が喋る中華料理軍団に「浦沢脚本っぽさを出したい」以上の必然性をもたらしていたのもよかった。願わくば長めのセリフの反復もみたかった。

 

令和ロビンちゃん、ポッピーピポパポの格好をしてもかわいい人間っているんだな。子役なので何をしてもかわいい。地球に見立てられたボールをトスしながら世界各国の首都の名前を言う場面だけで1900円に値する。

まあそんなロビンちゃんも歪ませた顔を巨大化させて宇宙空間に飛び出して目からビームを出すので訳が分からないのですが。ストーリーの大きなポイントとなる警句「ロボットは美しく愛することはできるが美しく愛されることはできない」のよくわからなさもいい。

まぎれもなく凄い作品なんだけどトップバッターの悲しさで細部が抜け落ちているのでこれ以上かけることがない。

しきりにズボンを引き上げるヒロシくんがやはりかわいかった。

 

スプリンパン まえへすすもう!

歌って踊りながら自己紹介をするレギュラーメンバー、ミュージカルの文法なのかなという気がするけどわずかな尺の中でゆったりと自己紹介されるのでその後の展開の圧縮に拍車がかかる。旅に出る!出会う!歌って踊る!別れる!私たちの冒険をみてくれてありがとう!!!

リンゴリーダーなんか自己紹介を終えた後は完全に背景に徹しているぞ。リンゴリーダーは本当にすごい奴でアニメドラえもんの第一話「ゆめの町 ノビタランド」で指ぱっちんをしている知らないキャラ並みに「なじみがないからこその破壊力」がある(知らない人は調べてみて)。

スプリンパンが旅で起きたことをお母さんに報告するシーンに「ロボコンガンツ先生とかぶってる!」と突っ込んだのは私だけではないはず。

監督と脚本を手掛けた井上ジェット氏は日帰り旅行のような緩やかな起伏を目指したらしいけど率直に言わせてもらえば、日帰り旅行は日帰り旅行でも弾丸トラベル。でもそれがいい。

公式から配布された壁紙はいまスマートフォンの待ち受け画面になっている。私が基本的に待ち受け場面はデフォから変えないことを知っている人にとっては、スプリンパンのインパクトがいかに強いかを端的に示すエピソードなのだけどいかんせん伝わりにくい。

今後新作が発表されたら見てみたい。

 

人体のサバイバル

一番まっとうに子供向けのストーリーを展開していたと思う。メインキャラの初出時に立ち絵を見せながらキャラクターの特徴をナレーターが教えてくれる親切さですでに砂漠にオアシスを見る思い。人気シリーズなのに初見への配慮も怠らないのは劇場版コナン並みにえらい。逆に言えばそういった配慮ができるから人気なのかも。

 

活発な少女ピピの体に生体探査機が入りこんでしまう理由がノウ博士の制止を聞き入れずにジオが機械を作動させてしまったからというのが一周回って新鮮。最近だとあまり見ないタイプのトラブルメーカー主人公で懐かしかった。昔はもっといた気がする。現実でも子供の無分別に良くも悪くも敏感な大人が増えたように思う。

でもまあサバイバルシリーズが今の子どもに受けているってことはジオの向こう見ずな元気さも受け入れられているってことだし心配いらないのかも。

 

ピピの口から胃、小腸と人体構造を観察しつつ時には寄生虫とも戦ったジオとノウ博士はとうとう大腸に到達する。「本当に肛門から排出エンドなのか…?」と戦々恐々していたら腸壁内に吸収されたのでほっとした。「たとえ胃の中、水の中」のしずかちゃんの気持ちがよく分かる。今振り返ればこの時点では映画は中盤に差し掛かったくらいだったけど、三本立て映画の時間感覚が分からないし映画館に行ったのも久々だったので心底手探りでの映画鑑賞だった。

 

腸壁から血管を辿り、脳の腫瘍を見つけ、鼻から体外に抜け、ピピが重篤な状態に陥る部分は前二作ほどではないけどなかなかのスピード感。

 

学会発表で「医学に大事なのは人を助けたいという心なのです」という精神論をぶちかまして研究予算を勝ち取るノウ博士にはそうはならんやろとツッコミを入れてしまう。

あとリスクがある治療方法が最低限の葛藤を経ただけで選択されるのも「今どきらしからぬ」印象を与える。善悪では無しにこの作品はこれでいいんだと思った。

 

「面白い話を見たい欲求」と「面白い部分に突っ込みたい欲求」を適度に満たしてくれる良作でした。